ジョギングをする事で得られる効果
はじめに:走る目的は「速くなること」だけではありません
ジョギングと聞くと、「きつそう」「膝が痛くなりそう」「昔から走るのが苦手だった」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、ジョギングは速く走るためだけの運動ではありません。自分のペースで、呼吸を感じながら、少しずつ身体を動かすことで、健康づくりや気分転換につながる可能性があります。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人に対して、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上行うこと、さらに筋力トレーニングを週2〜3日行うことが推奨されています¹。ジョギングは、その運動習慣をつくるための一つの選択肢といえそうです。
少しのジョギングでも、健康づくりにつながる可能性があります
「走るなら、長い距離を走らないと意味がない」と思う方もいるかもしれません。
しかし、ランニングやジョギングに関する研究では、走る習慣がある人は、走らない人と比べて死亡リスクが低い傾向が報告されています²³。
ランニングと死亡リスクに関するシステマティックレビュー・メタ解析では、ランニングをしている人は、していない人と比べて、全死亡リスク、心血管疾患による死亡リスク、がんによる死亡リスクが低い傾向が示されています²。
また、約55,000人を対象にした研究でも、余暇時間にランニングを行っている人は、行っていない人と比べて、全死亡および心血管疾患による死亡リスクが低い傾向が報告されています³。
ただし、これらは観察研究を含むため、「ジョギングをすれば必ず病気を防げる」とまでは言えません。それでも、少しでも走る習慣を持つことが、健康づくりに前向きな影響をもたらす可能性はあると考えられます。
心臓と肺にほどよい刺激が入ります
ジョギングは、心臓・肺・筋肉を連動させて行う有酸素運動です。
息が少し弾むくらいのペース(理想は鼻呼吸から口呼吸に変わるタイミングの強度が目安)で走ることで、心臓は全身へ血液を送り、肺は酸素を取り込み、脚の筋肉はリズムよく働きます。
厚生労働省のガイドでも、歩行またはそれ以上の強度の身体活動や、息が弾み汗をかく程度の運動が健康づくりの目安として示されています¹。
最初から長く走る必要はありません。
「3分歩いて、1分だけ軽く走る」
「10分だけ外に出てみる」
「息が上がりすぎないペースで走る」
このくらいから始めても、運動習慣づくりの第一歩になります。
気分転換やメンタル面にも良い影響が期待できます
ジョギングの良さは、体力づくりだけではありません。
身体活動が多い人は、少ない人と比べて、将来的なうつ病の発症リスクが低い傾向があることが、メタ解析で報告されています⁴。また、身体活動が多い人は、不安症状の発症リスクも低い傾向が示されています⁵。
もちろん、ジョギングが医療的な治療の代わりになるわけではありません。
しかし、気分が重い日、頭の中が考えごとでいっぱいの日に、少し外へ出て身体を動かすことは、心を整える一つの方法になるかもしれません。
一定のリズムで足を運び、呼吸を感じ、周りの景色を見る。
その時間は、考えすぎていた頭を少し休ませる時間にもなります。ジョギングは、いわば「動く瞑想」のように感じられる方もいるかもしれません。
睡眠の質にも関係する可能性があります
運動と睡眠の関係を調べた研究では、運動は成人の睡眠に関する一部の指標を改善する可能性が報告されています⁶。
ジョギングをした日は、身体がほどよく疲れ、夜に眠りやすく感じる方もいるかもしれません。
ただし、夜遅い時間に強度の高い運動を行うと、かえって目がさえてしまう場合もあります。
まずは、朝・昼・夕方など、自分の生活リズムに合う時間帯で、無理なく続けやすいタイミングを探してみると良さそうです。
体重管理にも役立ちます
ジョギングは、ウォーキングよりも運動強度が高くなりやすい運動です。
そのため、食事内容や生活習慣と組み合わせることで、体重管理や体脂肪のコントロールにも役立つ可能性があります。
ただし、「走れば何を食べてもよい」というわけではありません。体重管理では、運動だけでなく、食事・睡眠・筋力トレーニング・日常の活動量も大切です。
ジョギングは、体重を減らすためだけの運動ではなく、「動ける身体を保つための習慣」として考えると、長く続けやすくなるかもしれません。

ジョギングの前に、マシン筋トレで「走れる土台」をつくることも大切です
ジョギングは、ただ脚を前に出すだけの運動ではありません。
片脚で体重を支える力、股関節を使って身体を前に運ぶ力、体幹を安定させる力、そして呼吸を乱しすぎずにリズムを保つ力が必要になります。
そのため、久しぶりに運動を始める方や、膝・腰・股関節に不安がある方は、いきなり外で走り始めるよりも、まずはマシンによる筋力トレーニングで身体の土台を整えてからジョギングに進むことをおすすめしています。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人および高齢者に対して筋力トレーニングを週2〜3日行うことが推奨されています。また、有酸素性身体活動と筋力トレーニングを組み合わせることで、さらなる健康増進効果が期待できるとされています⁷。
ランニングに関する研究でも、筋力トレーニングはランニングエコノミー、つまり「同じスピードで走るときに、どれだけ効率よく走れるか」に良い影響を与える可能性が報告されています⁸。
つまり、ジョギングを続けるためには、「走る練習」だけでなく、「走るための身体づくり」も大切だといえそうです。
特に大切にしたいのは股関節の働きです
ジョギングでは、毎回片脚で体重を受け止めながら前に進みます。
このとき、股関節まわりの筋肉がうまく働くことで、骨盤や膝の位置が安定しやすくなります。反対に、股関節まわりの力が不足していると、膝や腰に負担がかかりやすくなる可能性があります。
股関節外転筋や外旋筋の強化については、膝前面痛を有する成人の痛みや機能改善に有益だったというシステマティックレビュー・メタ解析が報告されています⁹。
また、初心者ランナーを対象とした観察研究では、股関節外転筋力が膝前面痛の発症リスクと関連していたことも報告されています¹⁰。
もちろん、すべての膝痛や腰痛が股関節だけで説明できるわけではありません。
それでも、ジョギングを安全に始めるためには、太ももだけでなく、お尻まわり・股関節まわりを使えるようにしておくことが大切だと考えられます。
マシンで行う場合は、会員様は次のような種目が土台づくりに役立ちます。
・レッグプレス:股関節・膝・足首を連動させて押す力をつくる
・ヒップアブダクション、アダクション:お尻の横の筋肉を使い、片脚支持の安定につなげる
・トータルヒップマシン:お尻で身体を前に進める感覚をつくる
・カーフレイズ:足首まわりの安定と蹴り出しをサポートする
ジョギングを始める前に、これらの筋肉を少しずつ使えるようにしておくと、走るときの不安が軽くなる方もいるかもしれません。
胸まわりの呼吸を整えることも、身体の安定につながる可能性があります
ジョギング中は、脚だけでなく呼吸も大切です。
呼吸が浅くなりすぎたり、肩に力が入りすぎたりすると、身体全体が緊張しやすくなります。反対に、胸郭が動き、肋骨まわりが広がるように呼吸できると、リズムよく走りやすくなる方もいます。
呼吸筋トレーニングに関するメタ解析では、呼吸筋持久力の改善が報告されています¹¹。
ただし、「胸式呼吸をすれば必ず走りが安定する」とまでは言えません。
ここで大切なのは、胸だけを大きく動かすことではなく、肋骨まわりが固まりすぎず、呼吸と姿勢がつながっている感覚をつくることです。
ジョギング前には、次のような簡単な準備がおすすめです。
・肩の力を抜いて、ゆっくり息を吸う
・肋骨が横や後ろにも広がる感覚を持つ
・息を吐くときに、お腹まわりが軽く締まる感覚を確認する
・呼吸を止めずに、股関節まわりの筋トレを行う
・走るときも、息が上がりすぎないペースを守る
呼吸が整うと、身体の力みが抜け、歩く・走る動作がスムーズに感じられることがあります。
始めるときは「頑張りすぎない」ことが大切です
ジョギングには良い面がある一方で、急に走りすぎると膝・すね・足首・足底などに負担がかかることがあります。
ランニング関連のけがを調べたシステマティックレビュー・メタ解析では、初心者ランナーはレクリエーションランナーよりも、ランニング関連障害の発生率が高い傾向が報告されています¹²。
つまり、ジョギングは「始め方」がとても大切です。
最初の目安は、次のような形で十分です。
・まずはウォーキングから始める
・慣れてきたら、歩きの中に短いジョギングを入れる
・息が上がりすぎないペースにする
・痛みが出たら無理に続けない
・週1〜2回から始める
・筋力トレーニングやストレッチも組み合わせる
特に、久しぶりに運動を始める方、膝や腰に不安がある方、体重増加が気になる方は、いきなり長く走るよりも、「歩く+少し走る」から始める方が安全です。
トレッドミルなら「歩く+走る」を安全に始めやすいです
外を走るのが不安な方には、トレッドミルを使ったジョギングもおすすめです。
トレッドミルの良いところは、スピードを自分で調整しやすいことです。いきなり長く走るのではなく、インターバル式に「歩く」と「軽く走る」を繰り返すことで、無理なくジョギングに慣れていくことができます。
例えば、最初は次のような形でも十分です。
・3分歩く
・1分だけゆっくり走る
・また3分歩く
・余裕があれば、もう一度1分走る
このように、歩行とジョギングを交互に行うことで、心肺機能や脚への負担を確認しながら進めることができます。
外で走ると、つい周りのペースに引っ張られたり、帰り道のことを考えて無理をしてしまうことがあります。
その点、トレッドミルではすぐにスピードを落とすことができ、体調に合わせて中止しやすいという利点があります。
ジョギングを始めたい方は、まずマシン筋トレで股関節や脚の土台をつくり、その後にトレッドミルで「歩く+少し走る」から始めてみるとよいかもしれません。
おすすめは「歩く+少し走る」から
ジョギングを始めるときは、最初から30分走り続ける必要はありません。
例えば、次のような始め方がおすすめです。
1週目:10〜15分のウォーキング
2週目:3分歩く+1分軽く走る、を数回
3週目:2分歩く+1分軽く走る、を数回
4週目:体調に合わせて、少しずつ走る時間を増やす
大切なのは、「疲れ切るまで走ること」ではありません。
「また次も走ってみようかな」と思えるくらいで終えることです。

ジョギングは、自分と向き合う時間にもなります
ジョギングをしていると、自然と呼吸、足音、姿勢、腕の振り、景色に意識が向きます。
スマートフォンから少し離れ、誰かと比べることなく、自分のペースで進む時間。
その時間は、身体を鍛えるだけでなく、自分の心と向き合う時間にもなるかもしれません。
速く走る必要はありません。
長く走る必要もありません。
まずは、外に出て、少し歩いて、少しだけ走ってみる。
その小さな一歩が、健康づくりの大きな一歩になるかもしれません。
まとめ
ジョギングには、心肺機能への刺激、気分転換、睡眠、体重管理、健康づくりなど、さまざまな良い影響が期待されています¹⁻⁶。
一方で、急に走りすぎるとけがにつながる可能性もあるため、最初は「歩く+少し走る」から始めることが大切です¹²。
さらに、ジョギングを長く続けるためには、走る前の土台づくりも重要です。マシン筋トレで股関節・お尻まわり・脚の筋力を整え、胸まわりの呼吸を意識しながら、トレッドミルで歩行とジョギングを繰り返すと、無理なく始めやすくなります⁷⁻¹¹。
ジョギングは、特別な道具がなくても始められる運動です。
まずは、5分でも10分でも大丈夫です。
今日の小さな一歩が、これからの身体を守る習慣につながるかもしれません。
参考文献・引用文献
- 厚生労働省. 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:成人版. 2023.
URL:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-002.html - Pedisic Z, Shrestha N, Kovalchik S, Stamatakis E, Liangruenrom N, Grgic J, et al. Is running associated with a lower risk of all-cause, cardiovascular and cancer mortality, and is the more the better? A systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2020;54(15):898-905.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31685526/ - Lee DC, Pate RR, Lavie CJ, Sui X, Church TS, Blair SN. Leisure-Time Running Reduces All-Cause and Cardiovascular Mortality Risk. J Am Coll Cardiol. 2014;64(5):472-481.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25082581/ - Schuch FB, Vancampfort D, Firth J, Rosenbaum S, Ward PB, Silva ES, et al. Physical Activity and Incident Depression: A Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies. Am J Psychiatry. 2018;175(7):631-648.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29690792/ - Schuch FB, Stubbs B, Meyer J, Heissel A, Zech P, Vancampfort D, et al. Physical Activity Protects From Incident Anxiety: A Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies. Depress Anxiety. 2019;36(9):846-858.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31209958/ - Kelley GA, Kelley KS. Exercise and Sleep: A Systematic Review of Previous Meta-Analyses. J Evid Based Med. 2017;10(1):26-36.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28276627/ - 厚生労働省. 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:筋力トレーニングについて. 2023.
URL:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-005.html - Llanos-Lagos C, Ramirez-Campillo R, Moran J, Sáez de Villarreal E. Effect of Strength Training Programs in Middle- and Long-Distance Runners’ Economy at Different Running Speeds: A Systematic Review with Meta-analysis. Sports Med. 2024;54(4):895-932.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38165636/ - Alammari A, Spence N, Narayan A, Karnad SD, Ottayil ZC. Effect of hip abductors and lateral rotators’ muscle strengthening on pain and functional outcome in adult patients with patellofemoral pain: A systematic review and meta-analysis. J Back Musculoskelet Rehabil. 2023;36(1):35-60.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35988215/ - Ramskov D, Barton C, Nielsen RO, Rasmussen S. High eccentric hip abduction strength reduces the risk of developing patellofemoral pain among novice runners initiating a self-structured running program: a 1-year observational study. J Orthop Sports Phys Ther. 2015;45(3):153-161.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25627149/ - Sales ATN, Fregonezi GAF, Ramsook AH, Guenette JA, Lima INDF, Reid WD. Respiratory muscle endurance after training in athletes and non-athletes: A systematic review and meta-analysis. Phys Ther Sport. 2016;17:76-86.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26626464/ - Videbæk S, Bueno AM, Nielsen RO, Rasmussen S. Incidence of Running-Related Injuries Per 1000 h of Running in Different Types of Runners: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2015;45:1017-1026.
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-015-0333-8
