フリーウェイトで肩を痛めないために|肩トレを始める前に知っておきたいリスク

フリーウェイトは、筋力を高めるうえでとても有効なトレーニング方法です。
一方で、ベンチプレス、ダンベルプレス、ショルダープレス、サイドレイズなどを急にやりすぎると、肩を痛めてしまう方もいます。

私自身も昔、肩のトレーニングを急に頑張りすぎて肩を痛めた経験があります。
また、会員様の中にも「ダンベルを一気に頑張りすぎて、肩が痛くて夜も眠れない」という状態になった方がいました。

このような痛みがすべて腱板損傷とは限りません。
しかし、腱板と呼ばれる肩のインナーマッスルに負担がかかっている可能性は考えておく必要があります。¹ ²

肩は「よく動く」ぶん、不安定になりやすい関節

肩関節は、体の中でも特に大きく動く関節です。
腕を上げる、横に広げる、後ろに回すなど、さまざまな方向へ動かせることが特徴です。

その反面、肩は股関節のように深くはまり込んでいる関節ではありません
そのため、自由に動けるぶん、筋肉による安定性がとても大切になります。¹ ²

ここで重要になるのが、腱板です。
腱板は、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋という4つの筋肉から構成され、上腕骨の頭を肩甲骨の受け皿の中心に保つ役割を担っています。¹ ²

つまり、肩のトレーニングでは、三角筋や大胸筋などの大きな筋肉だけでなく、腱板や肩甲骨まわりの筋肉がうまく働くことが大切だと考えられます。

フリーウェイトで肩を痛めやすい場面

フリーウェイトで肩を痛めやすい場面として、まず考えたいのは「急に重くすること」です。

筋肉を強くするためには、少しずつ負荷を高めることが必要です。
しかし、準備ができていない状態で急に重量や回数を増やすと、腱や関節にかかる負担が大きくなりやすいと考えられます。⁶

特に肩の場合は、次のような場面で注意が必要です。

・久しぶりにベンチプレスを行う
・ダンベルの重量を急に上げる
・肩が痛いのにサイドレイズを続ける
・ショルダープレスで肩がすくんだまま挙げる
疲れてフォームが崩れているのに回数を続ける
反動を使って無理に挙げる

トレーニングそのものが悪いわけではありません。
問題は、「今の肩が受け止められる負荷」を超えてしまうことです。

ベンチプレスでは、手幅と肩甲骨の位置に注意したい

安野拓将さんのnoteでは、ベンチプレスで肩を痛める理由として、肩の構造、腱板、肩甲骨の位置、グリップ幅などがわかりやすく整理されています。¹

Noteboomらの研究では、経験者10名を対象に、ベンチプレスのグリップ幅、肩の開き方、肩甲骨の位置を変えたときの肩関節への負荷を分析しています。²

その結果、広すぎるグリップや肩甲骨が前に出た状態では、肩関節や肩鎖関節への負荷が増えやすいことが示されています。²
一方で、肩甲骨を適切に寄せた状態では、肩関節への剪断力や腱板の活動量が低下し、肩への負担を減らせる可能性が示されています。²

そのため、ベンチプレスを行う場合は、単に「重い重量を挙げる」ことだけを目的にするのではなく、肩甲骨の位置、手幅、バーの下ろし方を丁寧に確認することが大切だと考えられます。

肩鎖関節にも負担がかかることがある

ベンチプレスやオーバーヘッド動作では、肩の奥だけでなく、鎖骨の外側にある肩鎖関節にも負担がかかることがあります。³

遠位鎖骨骨溶解という状態は、ウエイトトレーニングを行う人にみられることがあり、ベンチプレスやオーバーヘッドリフトのような繰り返しの負荷が関係するとされています。³

この場合、肩の前上方や鎖骨の外側あたりに痛みを感じることがあります。
「肩の痛み」といっても、腱板だけではなく、肩鎖関節、滑液包、上腕二頭筋腱など、複数の組織が関係する可能性があります。

そのため、痛みが強い場合や長引く場合は、自己判断でトレーニングを続けず、医療機関で評価を受けることも大切です。

夜も眠れない肩の痛みは軽く見ない

肩の痛みで注意したいのが、夜間痛です。

Mayo Clinicでは、腱板損傷の症状として、肩の奥の鈍い痛み、睡眠を妨げる痛み、髪をとかす動作や背中に手を回す動作のしづらさ、腕の筋力低下などが挙げられています。⁴

もちろん、夜に痛いからといって必ず腱板損傷というわけではありません。
しかし、「夜も眠れない」「腕が上がらない」「力が入らない」「痛みが数日以上強く続く」といった場合は、無理にトレーニングを続けない方がよいと考えます。

ONE STEPでも、強い痛みがある場合は、まず痛みを落ち着かせることを優先します。
1日全く痛くない日を作ることから始められる(肩を管理できる)状態が重要です。
そのうえで、痛みの出ない範囲から、肩甲骨・胸郭・腱板まわりの動きを少しずつ整えていくことが大切だと考えています。

インナーマッスルとアウターマッスルのバランス

肩のトレーニングでは、三角筋や大胸筋などのアウターマッスルが目立ちやすいです。
見た目にもわかりやすく、重量も伸びやすいため、つい大きな筋肉(アウターマッスル)ばかりを鍛えたくなります。

しかし、肩を安全に動かすためには、腱板や肩甲骨まわりの筋肉も大切です。
腱板は、腕を動かすときに上腕骨頭を関節の中心に保つ役割を持っています。¹ ²

アウターマッスルが強く働く一方で、腱板や肩甲骨まわりの働きが追いついていないと、肩の中でズレや挟み込みが起こりやすくなる可能性があります。¹ ²

そのため、肩のトレーニングでは「重さ」だけではなく、次のような視点も大切です。

・肩甲骨が安定しているか
・肩がすくんでいないか
・肘や手首だけで無理に挙げていないか
・胸郭が硬くなりすぎていないか
・痛みを我慢していないか
・軽い負荷でも狙った筋肉を感じられるか

肩を守るためのトレーニングの進め方

肩を守りながらフリーウェイトを行うためには、いきなり重くするのではなく、段階的に進めることが大切です。

たとえば、久しぶりに肩のトレーニングを行う場合は、最初から高重量を扱うのではなく、軽いダンベルやチューブ、自重で動きを確認するところから始める方が安全です。

腱板関連肩痛に対しては、運動療法が痛みや機能の改善に役立つ可能性が報告されています。⁵
また、肩インピンジメント症候群に対して、肩周囲筋への漸進的なレジスタンストレーニングが痛みや機能改善に有効だったとする研究もあります。⁶

ここで大切なのは、「鍛えること」と「無理をすること」は違うということです。

肩に違和感がある場合は、次のように進めることをおすすめします。

・痛みの出る種目はいったん中止する
・痛みの出ない可動域で行う
・重量を下げる
・回数を減らす
・反動を使わない
・肩甲骨の位置を確認する
・胸郭や肋骨の動きも整える
・痛みが強い場合は医療機関に相談する

ONE STEPで大切にしたい考え方

ONE STEPでは、トレーニングを「ただ筋肉を鍛えるもの」としてではなく、体を長く使うための準備として考えています。

肩のトレーニングも同じです。
大きな筋肉を鍛えることは大切ですが、その前提として、肩甲骨、胸郭、腱板、体幹が協調して動くことが必要だと考えています。

フリーウェイトは自由度が高いぶん、体の使い方がそのまま負荷になります。
良いフォームで行えば効果的ですが、準備が不十分なまま重量を上げると、肩に負担が集中する可能性があります。

だからこそ、ONE STEPでは、

・まず動きを確認する
・軽い負荷で感覚をつかむ
・痛みのない範囲で行う
・少しずつ負荷を上げる
・肩だけでなく、胸郭や姿勢も整える

という流れを大切にしています。

まとめ

フリーウェイトは、筋力づくりにとても有効な方法です。
しかし、肩のトレーニングを急にやりすぎると、腱板や肩鎖関節などに負担がかかり、痛みにつながる可能性があります。¹ ² ³

特に、夜も眠れないほどの肩の痛み、腕が上がらない、力が入らないといった症状がある場合は、無理に続けないことが大切です。⁴

肩を守りながら鍛えるためには、インナーマッスルとアウターマッスルのバランス、肩甲骨の位置、胸郭の動き、段階的な負荷設定を意識することが大切だと考えています。

「肩トレを頑張る」ことは悪いことではありません。
ただし、頑張る順番を間違えないことが大切です。

まずは軽く、丁寧に。
そして、痛みのない範囲で少しずつ。

それが、肩を守りながらトレーニングを続けるための大切な一歩だと思います。

参考文献

  1. 庵野拓将.(2026)「ベンチプレスで肩を壊す本当の理由と、科学が教える肩の守り方」『note』2026年5月3日.
  2. Noteboom L, Belli I, Hoozemans MJM, Seth A, Veeger HEJ, Van Der Helm FCT.(2024)「Effects of bench press technique variations on musculoskeletal shoulder loads and potential injury risk」『Frontiers in Physiology』15,1393235.
  3. Evans DC, Schroeder JD.(2023)「Distal Clavicular Osteolysis」『StatPearls』Treasure Island (FL): StatPearls Publishing.
  4. Mayo Clinic.(2025)「Rotator cuff injury – Symptoms and causes」Mayo Clinic.
  5. Wu D, Wen Z, Ke H, Zhang J, Zhong S, Teng J, Xu L, Li J, Shao Y, Zeng C.(2025)「Specific modes of exercise to improve rotator cuff-related shoulder pain: systematic review and meta-analysis」『Frontiers in Bioengineering and Biotechnology』13,1560597.
  6. Lombardi I Jr, Magri AG, Fleury AM, Da Silva AC, Natour J.(2008)「Progressive resistance training in patients with shoulder impingement syndrome: a randomized controlled trial」『Arthritis Care & Research』59(5),615-622.
  7. Ratamess NA, Alvar BA, Evetoch TK, Housh TJ, Kibler WB, Kraemer WJ, Triplett NT.(2009)「Progression models in resistance training for healthy adults」『Medicine & Science in Sports & Exercise』41(3),687-708.
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